2012年10月16日火曜日

超簡単な歩留差異と配合差異

歩留り(ぶどまり)」という聞きなれない言葉のせいか、歩留差異と配合差異がどういうものなのか、とっつきにくい印象がありました。でもじっくり時間をかけて読み解くと、なんだそんな単純なことだったのかと拍子抜けするくらい簡単でした。以下、僕なりの方法でその理解の仕方を説明しましょう。

「歩留り」の反対の意味を表す言葉を「歩減り(ぶべり)」といいます。これは、モノを作る途中で減ってしまった材料のことを言います。例えば液体原料だと蒸発したり、固体の材料でもクズが出たりしますよね。そういった諸々を歩減りと言います。逆に歩留りは、最後まで残った材料のことです。原料や材料を使いきった場合、歩留りはすなわち完成品のことなのです。

ではここで簡単な例を出してみます。1個80gのおにぎりを10個作ります。お米は1gで0.7円とします。なので単純に考えると80g×10個×0.7円=560円になりますね。でも800gで済むところを実際には900gも使ってしまったとします。すると(800g-900g)×0.7円=△70円という差異(損失)が発生してしまいました。これが歩留差異です。一応、図にするとこんな感じ。


これだけ見ると凄まじく簡単だということが分かると思います。じゃあなんで教科書だと難しく感じてしまうかと言うと、それは最初から配合差異を一緒に勉強してしまうからです。歩留差異をきちんと理解していれば、どっちがどっちだったかなんて混乱することはまずないと思います。

配合差異という言葉から、なんとなく材料の組み合わせ(配合)が関係しそうだというのは分かりますよね。いったい何の差異なのかを端的に言うと、実際歩留と実際消費の差異となります。またおにぎりを例に出して説明しましょう。

今度はおにぎりを二種類のお米を使って作ることにします。0.7円の魚沼産コシヒカリを300g(210円)、0.5円の会津産コシヒカリを500g(250円)で合計460円が標準原価です。しかし実際には0.7円の魚沼産コシヒカリを350g(245円)、0.5円の会津産コシヒカリを550g(275円)で合計520円も使ってしまいました。すると差額は60円となりますが、この60円を歩留差異と配合差異とに分けて考えることが出来るのです。そのためにはまず、実際歩留がいくらなのかを計算する必要があります。

標準原価で得た材料の量を標準歩留と言います。例に従えば、魚沼産コシヒカリが300g、会津産コシヒカリが500gで3対5の割合(配合)となりますね。全体の実際消費量にこの割合を掛けたものが実際歩留なのです。

魚沼:900g×300g÷800g=337.5g
会津:900g×500g÷800g=562.5g

これを元に図をこしらえるとこうなります。


これで完璧です。配合差異を見ると、魚沼産コシヒカリ使いすぎなのが一目瞭然ですね。ああ、なんだかお米が食べたくなってきました

2012年10月14日日曜日

吸収合併の仕訳まとめ

吸収合併と一言で言っても、状況によって色々な仕訳が登場します。簿記1級的に吸収合併の仕訳についてまとめておきます。全部パーチェス法です。

■基本
例 A社はB社を吸収合併します。B社は諸資産1,000円、諸負債200円。B社を吸収合併するためにA社は株式を100株(時価12円)発行することになりました(B社株式100株と引き換え)。増加する株主資本の内半分を資本金に、もう半分を資本準備金とします。

まずはB社の諸資産と諸負債を計上します。


続いて増加する株主資本を計算し、のれんを算出します。

増加する株主資本:100株×12円=1,200円
のれん:1,200円-(諸資産1,000円-諸負債200円)=400円


そして最後に、資本金と資本準備金を計上して完了です。

資本金:1,200円÷2=600円
資本準備金:1,200円÷2=600円


■段階取得の場合
例 A社はB社を吸収合併します。B社は諸資産1,000円、諸負債200円。B社を吸収合併するためにA社は株式を100株(時価12円)発行することになりました(B社株式100株と引き換え)。増加する株主資本の内半分を資本金に、もう半分を資本準備金とします。実はA社はB社の株を10株(簿価10円)を取得済みでした。

まずは諸資産と諸負債、それと取得済みのB社株式を計上します。


続いて増加する株主資本を計算し、のれんを算出します。

増加する株主資本:(100株-10株)×12円=1,080円
のれん:(1,080円+B社株式100円)-(諸資産1,000円-諸負債200円)=380円


そして最後に、資本金と資本準備金を計上して完了です。

資本金:1,080円÷2=540円
資本準備金:1,080円÷2=540円


■自己株式を処分する場合
例 A社はB社を吸収合併します。B社は諸資産1,000円、諸負債200円。B社を吸収合併するためにA社は株式を100株(時価12円)発行することになりました(B社株式100株と引き換え)。増加する株主資本の内半分を資本金に、もう半分を資本準備金とします。その際、自己株式10株(簿価10円)を処分することとしました。

まずは諸資産と諸負債、それと自己株式を計上します。


続いて増加する株主資本を計算し、のれんを算出します。

増加する株主資本:100株×12円=1,200円
のれん:1,200円-(諸資産1,000円-諸負債200円)=400円


そして最後に、資本金と資本準備金を計上して完了です。増加する株主資本から、自己株式分を差し引いて計算します。

資本金:(1,200円-100円)÷2=550円
資本準備金:(1,200円-100円)÷2=550円


■合併交付金がある場合
例 A社はB社を吸収合併します。B社は諸資産1,000円、諸負債200円。B社を吸収合併するためにA社は株式を100株(時価12円)発行することになりました(B社株式100株と引き換え)。増加する株主資本の内半分を資本金に、もう半分を資本準備金とします。その際に合併交付金を100円支払うこととしました。

合併交付金というのは、端数を調整するために支払うお金のことです。会社を吸収する時に、消滅企業の株主に株を発行するのですが、合併比率の影響で余りが出てしまうことがあります。そういった端数を無くすために、端数部分は現金を支払うことで対応することがあります。それが合併交付金なのです。

まずは諸資産と諸負債、それと合併交付金として現金を計上します。


続いて増加する株主資本を計算し、のれんを算出します。

増加する株主資本:100株×12円=1,200円
のれん:1,200円-(諸資産1,000円-諸負債200円)+合併交付金=500円


そして最後に、資本金と資本準備金を計上して完了です。

資本金:1,200円÷2=600円
資本準備金:1,200円÷2=600円


どれも微妙な違いですが、その微妙なところで間違えぬよう注意したいところです。

合併比率の算定(資本還元率の使い方)

会社が合併する際に、株式を何対何で割り振るかを決めなければなりません。これを合併比率と言います。この合併比率、実際にはガラガラポンで計算出来るものではなく、政治的な駆け引きもありつつ最終的に決められます。これは企業価値というものを計算するのがとても難しいからです。なので財務諸表を持ち出してきても、合併比率がどうなるかを正確に算出することは出来ません。とは言え、ある程度なら計算で合併比率を決めることが出来ます。簿記1級ではごくごくシンプルに、資産、利益率、還元率の3つを利用して企業価値を求め、その比率を合併比率とします。


A社が吸収する側の合併とします。もし合併比率が単純に、企業の資産額を元に算出されるとしたらどうでしょう。A社は1株100円、B社は1株160円となります。合併比率は160÷100=1.6となります。しかし表を見てもらうと、平均株主利益率はA社が10%なのに対してB社は2%しかありません。つまりA社の方がB社よりも稼ぐ力があるということです。それを無視して合併比率を決めてしまうのは不公平ですね。そこでまず、資産に対してどれくらい儲けられるかを見てみます。


純資産額に平均株主資本利益率を掛けてやることで、実際の利益額を算出します。そしてその利益額を資本還元率で割り、それだけの利益を得るにはいくらの資産が必要か(収益還元価値)という逆算をしてやるのです。上の例で言えばB社は資産1,600円もあれば済むところを8,000円もかけているので、非常に効率が悪いという結果になりました。

ここから先は問題文の指示に従って計算すればOKです。例えば時価による純資産額と収益還元価値とを足して2で割り、資産の平均値を出します。それを株数で割ってやれば、1株あたりの企業価値が算出されます。

A社:(10,000円+10,000円)÷2÷100株=100円
B社:(8,000円+1,600円)÷2÷50株=96円
合併比率:96円÷100円=0.96

自己受為替手形と自己宛為替手形の違い

掛けで売上が立った場合に使う勘定が「売掛金」です。しかし売掛金には期日が無いので、実際にお金が振り込まれるのがいつになるのか不安になる。そんな時に相手先に出してもらえると嬉しいのが「受取手形」。手形にすることで期日がしっかりと明示され、お金がいつ手に入るのかが確かになります。手形は破ってしまうと「不渡り」となり、それはもうビジネスにおける信用を完全に失ってしまいます。そんなわけで世の多くの企業は不渡りを出さぬよう一所懸命なのですよ。

手形を出すには当座預金を作らねばなりません。しかし会社の規模が小さく、信用がまだ低い場合には当座預金を作れない、つまり手形を発行出来ないなんてこともあります。しかし売った側としては手形を貰って安心したい。そんな時に活躍するのが自己受為替手形です。A社がB社に100円の売掛金があって、これを受取手形にしたいという状況を見てみましょう。


つまり、手続きがちょっと変わるということで、実際の仕訳は同じになります。簿記の問題で自己受為替手形が出てきたら、文章の読解力が試されているということでしょう。ところでこの自己受為替手形は、受取人を自社の支店とすることが出来ます。


以上が自己受為替手形についての説明です。続いて自己宛為替手形とはなんぞやという話。自己受為替手形が自ら売掛金を受取手形に変える手続きであるのに対して、自己宛為替手形は自ら買掛金を支払手形とする手続きです。とだけ言うと、普通に手形を振り出すのと何が違うんだって話になりますね。自己宛為替手形の特徴は、本支店会計で発揮されます。A社がB社に100円の買掛金があって、これを支払手形にしたいという状況を見てみましょう。


なんで本店から直接ではなく、支店を経由した取引をするかと言うと、取立手数料を節約するためと言います。上の例で、A社本店が東京にあり、A社支店とB社が大阪だった場合、遠隔地でのやり取りは必然的に銀行経由の取立手数料がかかってしまいます。近場であれば支店の人間が、取立日の1日前に銀行に持っていくことで、取立手数料を無しに出来るのです。これが自己宛為替手形です。

このあたりはややこしいので、絵で覚えるのが一番早いだろうと思います。上の図では、矢印の先が全て受取手形になるようにしました。また、「名宛人」「指図人」の表現はちょっと混乱しやすいので省いています。